精霊の守り人 上橋菜穂子作 二木真希子絵 偕成社
いきなり、自分の体にまったく知らない間に何かの卵が植えつけられたと知ったらどうでしょう?
しかも、ひょっとした、そのために自分が殺されるとわかったら、
おまけに、身内に命を狙われて殺されそうになったとしたら...。
小学校の図書室で借りてきた単行本です。
女ながら腕の立つ用心棒であるバルサは、あるとき、新ヨゴ皇国の第二皇子、チャグムを助けます。 チャグムは、父である皇帝の命を受けた狩人(暗殺者)に、二度も殺されそうになります。 チャグムの母である第二王妃より頼まれたバルサは、チャグムを連れて追っ手から逃げます。 チャグムが宿したものは、百年に一度卵を産む水の精霊<水の守り手>の卵、 チャグムは、この卵が生まれ出るまでまで守る<精霊の守り人>であるという。 もし、この卵がうまく生まれ、海にもどれなけれは、この地に大干ばつが襲うという。 百年前には、卵を宿した子どもが、体を二つに引き裂かれて死んだという。 宮殿では、王の権威を守るのために、この皇子、チャグムを殺そうとし、 土着民であるヤクー族との混血である、呪術師は、バルサとともに、卵と皇子を守ろうとする。 卵と、卵を宿す皇子を狙うラルンガや、王の刺客から逃れることができるのだろうか? 卵を無事に孵化させることができるのだろうか。
現実に歴史の中でも、その土地に昔から住んでいた民たちは、土地や文化、言葉を奪われたり、
命を奪われたりしています。
この作品のなかでも、土着の民である、ヤクー民族の伝統行事や言い伝えが失われかけていたことが、
解決をおくらせます。
そして、この本を読んだとき、人は、逃れようのない運命に巻き込まれるとともに、
その中で、運命に、ただ流されるのではなく、積極的に、運命を使って生きていこうとする強さを
感じることができました。