さんねん峠 李 錦玉・作 朴 民宜・絵 岩崎書店
朝鮮のむかしばなし さんねん峠
李 錦玉(リ クムオギ)作 朴 民宜(パク ミニ)絵
9月に2クラス、今月2クラスの予定で、3年生に読んでいます。
朝鮮のむかしばなし、といっても子供たちにはピンときませんがね、日本の一番近くにある国、いまは北朝鮮と韓国に別れています。
その国のむかしばなしです。
と、前置きして読み始めます。
著者の名前を読むのが難しい。
覚えていないと言えません。
最初の1クラスは、自信がなくて、著者名は飛ばしました。
2クラス目から、ようやく覚えて、著者名も読んでいます。
外国の人の名前、としか伝わらないでしょうが、実は漢字で書きます。
あるところに、さんねん峠といわれる峠があった。
そこで転ぶと、あと3年しか生きられないという言い伝えがあった。
だから、そこを通る人々は、転ばないように気を付けて歩いた。
ところがある秋の日、おじいさんがその峠で転んでしまった。
おじいさんは、あと3年しか生きられぬと思い込んで、寝込んでしまい、とうとう病気になってしまった...。
私は、まずはこの本の絵に魅了されました。
柔らかな色彩の、美しい峠の絵、峠から見える春や秋の風景、当時の朝鮮の様子がわかうr人々の服装や、生活の様子。
表紙の挿絵からもわかるように、じつにこまやかな表情の描写。
そして、美しい日本語で表現された文章の魅力。
たとえば、文末は、「ありました」、「よいながめでした」、「あるきました」、
「していました」などの統一された言葉で、なんというか、韻を踏んでいるというのでしょうかねえ、この使い方。
「はるには、すみれ、たんぽぽ、ふでりんどう、峠からふもとまで咲きつづけました。れんげつつじの さくころは、だれだって ためいきのでるほど よいながめでした」
というような文章からは、色つきでその光景が浮かぶようです。
この感動が子供たちに届けられたら、と思い、この本を選びました。
おはなしは、寝込んだお爺さんのところへ、ある少年がやってきて、
「転べば転ぶほど長生きするから、もう一度峠で転んだらいい」といいます。
そしておじいさんはその通りにしたら、その少年が、峠でかくれていて、
「一辺転べば3年で、十辺転べば30年、百辺ころべば300年。
こけて転んでひざついて、ながいきするとは、こりゃめでたい」
と歌い、それを聞いたおじいさん、うれしくなって、峠からふもとまで転がり下りて、
「病気はもう治った。百年でも二百年でも長生きできる」とケロッとして喜んだ、というお話です。
どのクラスでも、最初はあちこちむいていた子供たちが、途中から本の方をむいて集中して聞いてくれました。
「このおじいさん、アホちゃうか」
「こけたら、血ぃがでるやん」
「なんべんもこけたら、けがするんちゃうか」
とか、席で色々つぶやいてるのが聞こえました。
うさママ、いい絵といい文章の本は、それだけで、子供たちをも魅了するんだなあ、と読みながら感動していました。